本学科は,1911年(明治44年)の九州帝国大学工科大学設立時に創立された冶金学科をルーツとする,工学部の中で最も伝統のある学科の一つです.令和3年4月から「材料工学科 (Department of Materials)」となり,工学部II群の一員として材料工学に関する教育・研究を行っています.また,大学院の専攻は工学部の6年一貫教育を見すえて,「材料工学専攻」と改組されました.大学院では,学部で学んだ内容をより専門的に深め,材料工学分野でのリーダーを輩出するための教育・研究プログラムを提供しています.
人類の文明は,石器時代から始まり,青銅器,鉄器時代を経て現代文明へと連綿と繋がっています.まさに人類は材料とともに発展してきたと言っても過言ではありません.そして現代,鉄,アルミ,チタンなどの金属材料のみならず,セラミックス,半導体,超伝導材料など多種多様な材料が創造され続けています.この世界には118個の元素しか存在しないにも関わらず、これら元素の無限とも言える組み合わせから、様々な性質をもった材料が創り出されています。材料工学は、このように身の回りにあるあらゆる「モノ」のもととなる材料や素材を創り出すための基盤となる学問です。
材料工学部門では「冶金物理化学」,「構造金属材料科学」,「機能材料科学」を3本の学問的基盤として,11の研究室により本分野を先導する教育・研究を行っております.同時に次世代を担う科学技術を創出するため、持続的発展を可能とする開発目標(SDGs)に資する、金属精錬技術の低環境負荷化,構造物の軽量化・マテリアルリサイクル,再生可能エネルギーの有効利用なども我々の重要な研究課題です.
以上のように九州大学工学部・材料工学科および工学府・材料工学専攻は,「マテリアルから新しい社会を拓く」,「マテリアルから地球を守る」という目標を掲げて教育・研究に取り組んでおります.当部門では最先端の材料解析学や材料計算科学などを駆使し、これまでに無い新材料を創り出すといった、未開拓分野への挑戦を行うことが可能です。材料工学科・材料工学専攻の卒業生・修了生達は持続的発展が可能なモノづくりを通した社会貢献を行う科学技術者として活躍しています。皆さんも材料工学を学び、新材料で新時代を築きませんか?
詳細な情報は,webサイト内の教員紹介や「材料工学チャンネル」の動画を是非ともご覧ください.
九州大学大学院工学研究院 材料工学部門長
大野 光一郎
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石器や木材など自然に存在するものを加工した材料は第1世代の材料、天然素材から人工的に変換された銅,鉄などは第2世代の材料,高分子材料は第3世代材料,合目的に設計された半導体や複合材料は第4世代の材料に分類されます。18世紀後半に英国で起こった産業革命には、製鉄法の発明と発展があり,この鉄と産業革命による大量生産性の確立が現代の文明社会の基礎となっています。鉄の大量生産が自動車社会を創出し,ジュラルミンの発明が航空機を発展させ,超耐熱合金の開発の進歩がジェットエンジンを用いた大型旅客機を普及させました。また,半導体の発明がなければ現在の電気通信や電算機技術さらには情報化社会の発展も起りませんでした。これらはすべて「新しい材料」の発明が文明発展の「キーテクノロジー」になった事例であります。
現在、超急冷アモルファス材料,超伝導材料,人工超格子,超微粒子,超塑性材料,超耐熱材料など「超」で表されるように,従来の常識を超えるこれまでにない材料がつぎつぎと開発されつつあります。
次世代社会基盤を支える、超伝導,核融合,宇宙開発などにおいては,常温で超伝導となる材料,過酷な環境下で安定利用可能な材料,軽量かつ高強度な材料の開発が鍵となっています。気候変動問題への対応には,リサイクル技術の発展,環境調和材料の開発,モビリティの軽量化および長寿命化など、材料研究が中心的な役割を果たす分野となります。
材料研究に携わる科学技術者が次世代の文明社会を支えていくことを自覚し、材料研究および技術開発を通した社会的な貢献と、次世代を担う高度な人材育成が、我々材料工学部門の責務です。