ご挨拶
「マテリアルから新しい社会を拓く」
「マテリアルから地球を守る」

2025年度の材料工学科長・材料工学部門長の寺西亮と申します。本学科の特長や活動について、紹介させて頂きます。
本学科は、1911年に設立された九州帝国大学工科大学冶金学科を前身とし、我が国でも最も古い歴史と伝統を誇る材料系学科の一つです。これまでに数多くの人材を輩出し、日本のみならず国際社会に大きく貢献してきています。
材料系の学科は、新たなモノ(材料)を創り出す技術者や研究者の入口と言えます。「物質」とは原子や分子を単位として自然界に存在するものを指すのに対して、「材料」とは物質に実用的な価値や機能が加わったものを指します。よって「材料工学」とは、基礎学問(物理や化学、数学など)と工学(工業製品の創製)とを繋ぐ学問と言えます。物質に工夫を凝らして機能を持たせ、工業製品として使えるモノにするための方法を研究する、それが材料工学です。
本学科の学生は、3年生までは座学と学生実験が中心で4年生から研究室に配属されて卒業研究に着手します。卒業後は9割近くの学生が大学院修士課程の材料工学専攻に進学しています。研究の世界に入って、座学や学生実験で学んだ基礎学問が工学に応用できることを知ったり、様々な実験装置に触れることで工学から基礎学問の重要さを体感できたりすることが、大学院に進んで更にレベルアップしたいという意欲に繋がっているように思います。修士修了後は、企業などで即戦力として活躍しており、更に研究を深めたい学生は博士課程に進級して研究力を高めています。
本学科の教員は、「冶金物理化学」「構造用金属科学」「機能材料科学」の3つの学問的基盤分野に分かれ、11の研究室にて本分野を先導する教育・研究を行っています。物質を構成する原子や電子の微視的な振る舞いを理解しながら、学生と一緒になって材料の機能をより深く考察したり新しい材料の開発に取り組んだりする中で、持続可能な社会の発展に寄与する人材を育成しています。
詳細な情報は,webサイト内の教員紹介や「材料工学チャンネル」の動画を是非ともご覧ください。
九州大学大学院工学研究院 材料工学部門長
寺西 亮
部門公認のツイッターアカウント(@zaikobumoncho)をご覧頂き、ご意見やコメントをお寄せください。
材料工学部門について
キーテクノロジーとしての材料工学

石器や木材など自然に存在するものを加工した材料は第1世代の材料、天然素材から人工的に変換された銅,鉄などは第2世代の材料,高分子材料は第3世代材料,合目的に設計された半導体や複合材料は第4世代の材料に分類されます。18世紀後半に英国で起こった産業革命には、製鉄法の発明と発展があり,この鉄と産業革命による大量生産性の確立が現代の文明社会の基礎となっています。鉄の大量生産が自動車社会を創出し,ジュラルミンの発明が航空機を発展させ,超耐熱合金の開発の進歩がジェットエンジンを用いた大型旅客機を普及させました。また,半導体の発明がなければ現在の電気通信や電算機技術さらには情報化社会の発展も起りませんでした。これらはすべて「新しい材料」の発明が文明発展の「キーテクノロジー」になった事例であります。
次世代のために私たちができること

現在、超急冷アモルファス材料,超伝導材料,人工超格子,超微粒子,超塑性材料,超耐熱材料など「超」で表されるように,従来の常識を超えるこれまでにない材料がつぎつぎと開発されつつあります。
次世代社会基盤を支える、超伝導,核融合,宇宙開発などにおいては,常温で超伝導となる材料,過酷な環境下で安定利用可能な材料,軽量かつ高強度な材料の開発が鍵となっています。気候変動問題への対応には,リサイクル技術の発展,環境調和材料の開発,モビリティの軽量化および長寿命化など、材料研究が中心的な役割を果たす分野となります。
材料研究に携わる科学技術者が次世代の文明社会を支えていくことを自覚し、材料研究および技術開発を通した社会的な貢献と、次世代を担う高度な人材育成が、我々材料工学部門の責務です。
沿革
- 明治44年(1911年)
- 材料科学工学コースの前身の一つ冶金学科は冶金学講座および鉄冶金学講座の2講座編成で創設され,金属系学科としては,東京大学,京都大学に次いでわが国で3番目の歴史をもつ伝統的な学科です。その後,昭和15年までに5講座編成(学部学生:定員1学年25名)と拡充。
- 昭和36年(1961年)
- 冶金学科の鉄冶金学講座を核に鉄鋼冶金学科(6講座編成,学部学生定員1学年40名)が新設。
- 昭和50年(1975年)
- 本学に大学院総合理工学研究科が創設され,材料開発工学専攻が新設。
- 平成2年(1990年)
- 冶金学科および鉄鋼冶金学科が材料工学科に統合。
- 平成9年(1997年)
- 大学院重点化にともない,物質科学工学科に4つのコースが新設。その1つが材料科学工学コースです。
- 令和3年(2021年)
- 工学部の組織改革により材料工学科に改組。